自炊のススメ 2 〜 カッターナイフで本を裁断する

第2回は本の裁断についてお話しします。

最近では本の背中を落とさずに綴じたままカメラで撮影する非破壊自炊も一般向けの選択肢として出てきているようですが、やっぱり画質的な観点から見たら本をばらしてスキャンする方が良さそうです。

本をばらす方法には、糊を溶かす方法と背中をばっさり裁つ方法とがありますが、どちらも一長一短です。

糊を溶かす方法

長所
  • 漫画の見開きページなどで見切れることなくスキャンすることができる。
  • その気になれば完全に元通りに再製本することも可能
短所
  • 熱で溶かす場合、有機溶剤で溶かす場合、いずれも時間が掛かる
  • 糊が残っていると、高温になったスキャン面で糊が溶けてこびりつくので、糊を完全に取り切る必要がある
  • 無線綴じの切れ込みが入ってしまうので、ペイントソフトなどでの補正も必要になる

背中を裁断する方法

長所
  • 所要時間が短い
  • 見開きページの無い漫画や小説では全く問題ない
短所
  • 見開きページは切れてしまう
  • 切れないように(見切れる幅が小さくなるように)裁断幅を小さくすると、糊が残ってバラバラにならないケースがあり、手動で確認する必要がある
  • 裁断機を使わない場合、コツが居る
  • 再製本する場合、サイズが小さくなる上、手間が掛かる

総合的に見れば背中を裁断する方法が良いと思いますが、例えば漫画でどうしても見切れては困る部分だけ糊を溶かす方法を組み合わせるなどで対応できると思います。

背中を裁断する方法では、普通「裁断機を購入しましょう」と書かれているものです。しかし、裁断機は安い物でも2万円以上します。さらに、裁断機の収納場所が必要になり、本棚のスペースを増やすために自炊するつもりが意味なくなることも考えられます。

そこで、今回はカッターナイフで綺麗に背中を落とすコツをお教えします。慣れれば200ページ(100枚)位の本は一度に切ることができます(裁断機も業務用の高価な物を除けば一度に100枚程度しか切れません)。

必要な物

前回も書きましたが、

  • カッターナイフ
  • カッターマット
  • カッターナイフの替刃
  • 厚手のアクリル製定規

を用意してください。

下ごしらえ

まずはカバーと表紙(裏表紙)をはがします。表紙は本文と糊で接着されているので、むしるようにしてはがします。なお、表紙をはがさないまま裁断することも可能です。

続いて本を適当な厚さに分割します。方法は
http://bizmakoto.jp/bizid/articles/1006/09/news029_2.html
にあるようにやってください。
慣れれば100枚、200ページまでまとめて切れますが、初めのうちは30枚、60ページごとに分割する方が良いと思います。

カッターでの裁断方法

いくつか基本的な事を守るだけで裁断機で切ったかのごとく綺麗に切ることができます。

カッターの刃は垂直に立てる

垂直に立てれば真っ直ぐに切れます。なんだそんなことかと思うかも知れませんが、カッターで上手く切れない最大の理由は刃が垂直でないことです。

次の模式図を見てください。

刃が垂直になっている限りは、既に切り終わった切断面が定規となるので最後まで真っ直ぐに切ることができます。もし刃が斜めになると、それが新しい定規となるので、切断面はどんどん曲がっていきます。残念なことに、曲がったことに気づいても修正する術はありません。切断面の両側からナイフの刃が挟み込まれているからです。

厚手のアクリル製定規を、と言ったのは、厚手のアクリル製定規の背中側を利用することで刃先を垂直に立てやすくするためです。もちろんステンレス製でも刃先を立てることに注意すれば何の問題もありません。

ビリヤードのキューを繰り出すように、カッターナイフを動かす

カッターの刃を垂直に立てるためには、手首で切ろうとしてはいけません。腕全体で真っ直ぐ動かすようにします。イメージとしてはビリヤードのキューを動かす腕の動きです。もちろんビリヤードのキューと違って手を引くときに力を掛けるのですが。

特に最初のうちは力を掛けてはいけない。

余分な力を掛けると、ぶれて力が垂直に掛からなくなります。特に最初のうちは切断面ができあがっていないので刃が傾きやすくなります。ある程度刃がめり込んだら多少強めに切っても問題ありません。
力を掛けるよりも、切る回数をこなすようにします。またカッターの刃はなるべく新しい物を使ってください。切れ味が悪くなったらさっさと折ってしまいましょう。

刃を出し過ぎない

刃を長く出せば出すほど刃先がぶれやすくなります。切る紙の厚さの3倍くらい刃があれば十分です。厚い束を一度に切る場合は、始めは短めに出して、途中で刃を長く出すように替えれば良いです。

定規はしっかりと体重を掛けて抑える

定規が動くと困りますね。腕の力で押さえるのではなく、体重を乗せる感じで押さえます。カッターマットを床に置いて座って切る、低いテーブルの上にカッターマットを置いて立って切る、その辺はやりやすい方法で良いと思います。

このポイントを押さえるだけで高価な裁断機は不要になります。お試しあれ。

ちなみに、本の切断位置は裁断機よりもかなり自由が利きます。裁断機では紙押さえの善し悪し次第ですが、5mm程度は切らないと行けませんが、カッターナイフなら裁断幅を1mmにするといった芸当も可能です(まあ1mmの裁断幅じゃ本はばらけませんし、失敗しやすいので2mm以上切ることをお薦めします)。